MoodMons
← 記事
いつも「自分は足りない」と感じてしまう? 心理学が解き明かす「自信のなさ」の2つの原因と、自信を取り戻す日常の練習

いつも「自分は足りない」と感じてしまう? 心理学が解き明かす「自信のなさ」の2つの原因と、自信を取り戻す日常の練習

会議で同僚がよどみなく話すのを見て、友人が誰の言葉も軽やかに受け止めるのを見て、うらやましく思う一方で、心の中でそっとつぶやく——「私ももっと自信を持てたらいいのに⋯⋯」。そして自分が何かをうまくやり遂げたとき、最初に浮かぶのは誇らしさではなく、「今回はたまたま運がよかっただけ」という思いだったりします。

自信がないことは、必ずしも能力が足りないという意味ではありません。ときにそれは、あなたの脳が「自分の証拠を数える」やり方を、まだ覚えていないだけなのです。

自信とは何か? 心理学の「自己効力感」理論で読み解く

「自信」という言葉から、多くの人が思い浮かべるのは、外向的で、はっきりものを言い、恥をかくことを恐れない——そんな特定の人格タイプでしょう。けれど、心理学者アルバート・バンデューラ(Albert Bandura)が提唱した「自己効力感(Self-Efficacy)」という概念において、自信とは「自分は具体的なあることをやり遂げられる、と信じられること」を指します。

そして、この定義は自信の2つの特性を浮かび上がらせます。

  • 自信は後天的に積み上げるもの:それは生まれ持った性格ではなく、筋肉のように、経験を重ねるほど育っていくものです。
  • 自信は領域ごとに分かれている:それはひとかたまりではありません。ある分野ではとても心強くても、その自信がすべてのことに広がるとは限りません。たとえば、人の世話はとても得意でも、公の場で発言するのは苦手だったり、仕事の能力は高くても、親密な関係は不得手だったり、ということが起こります。

自信と自尊心はどう違う?

心理学で自信とよく並べて語られるもうひとつの概念が、「自尊心(Self-Esteem)」です。

自信は「自分にはできる、と信じられること」に近く、能力の感覚に目を向けています。一方で自尊心は「たとえできなくても、自分には価値がある、と思えること」に近く、人が自分自身をどう見ているかに目を向けています。

たとえば、仕事の能力が高く、自分ならできると分かっているために自信を持てている人がいます。けれど、ひとつミスをしたり否定されたりしただけで、自分の価値を疑い始めてしまう——そんなこともあります。反対に、失敗に見舞われても、なお自分をやさしく見つめ、一度うまくいかなかったからといって自分を丸ごと否定したりはしない人もいます。

この記事が主に扱うのは「自信をどう築くか」ですが、自信のなさの原因を見ていくと、自己価値の感覚が安定しているかどうかが、その人が自分の成功経験を本当に受け止められるかどうかにも影響することが見えてきます。

なぜ自信が持てないのか? 心理学が解き明かす2大原因

多くの人は、自信がないのを性格の問題だと考えます。けれど心理学の観点から見ると、自信のなさには、たいてい2つの異なる形成の道筋があります。

  • やり遂げた経験が足りない
  • 経験はあるのに、それを自信に変えられていない

自分がどちらに近いのかを理解することは、ただ「もっと自信を持て」と自分に言い聞かせるよりも、ずっと助けになります。

自信が持てない原因その1:やり遂げた経験が足りない

バンデューラの自己効力感理論によれば、人が最も自信を築きやすい源は、「私は本当にやり遂げた」という経験の積み重ねです。心理学ではこれを「熟達経験(Mastery Experience)」と呼びます。ひとつの物事をやり終えるたびに、脳には「なんだ、自分にもできるんだ」という感覚が少しずつ積み重なっていきます。

慎重な人の多くは、行動する前にリスクをすみずみまで考え抜きます。この慎重さはひとつの能力であり、むしろ強みでもあって、臆病さを意味するものではありません。けれど問題は、考えるだけでは経験値には数えられない、という点にあります。実際に試して、結果を残した部分だけが「やり遂げた経験」として計上されるのです。ですから、慎重な人の行動傾向は、成功経験の積み重なるスピードをゆるやかにし、その結果として「自分は能力が足りない」と感じさせてしまうことがあります。

自信が持てない原因その2:成功経験が自信に変わらない

もうひとつの状況は、実はもっとよく見られます。すでに多くのことをやり遂げ、たくさんの成果を積み上げてきたのに、それらの経験が本当の意味で自信になっていない、というものです。この「経験が入金されない」現象は、たいていいくつかの心理メカニズムと関わっています。

ネガティビティ・バイアス:成功がそもそも見えていない

人の脳は、生まれつきネガティブな情報のほうに敏感にできています。心理学者バウマイスター(Baumeister)と同僚たちは、2001年の古典的なレビュー〈Bad Is Stronger Than Good〉の中で、日常の小さな出来事から人生の大きな出来事まで、「悪い」ことがもたらす衝撃は、同じ程度の「よい」ことのそれをほぼ常に上回ることを指摘しました。

その結果、たとえたくさんの成功経験を生み出しても、それは見過ごされやすくなります。子どもの頃、92点のテストを返してもらったときに、言われるのはたいてい「なぜ8点足りなかったの」であって、「もう92点も取れたね」ではなかった——そんなふうに。それを繰り返すうちに、注意はバツのついたところばかりを見つめるように訓練されていきます。

習慣的な外的帰属:成功が自分の手柄として記録されない

たとえ成功が見えたとしても、そこには第二の落とし穴が待っています。その成功をどう説明するか、です。心理学者ワイナー(Weiner)の帰属理論は、人が成功や失敗を「内的」あるいは「外的」といった異なる原因に結びつけること、そしてその説明の仕方が、その後の自信を左右することを指摘しています。

もし成功をいつも外部の帳簿に記し、「ただ運がよかっただけ」「たまたまタイミングが合っただけ」と説明して、自分の努力や能力、選択に結びつけないなら、それらの経験も自信には変わっていきません。この「成功を割り引いてしまう」傾向こそが、心理学でいう「インポスター現象(Impostor Phenomenon)」です。クランス(Clance)とアイムス(Imes)が1978年に提唱したもので、外的な成果がどれほど優れていても、心の中では自分を運任せの「にせもの」だと感じ、いつ見破られるかとおびえ続ける状態を指します。

どうすれば自信を築ける? 心理学がすすめる2つの練習の方向

「自信のなさ」に2つの成因があるように、自信を築くにも、それに対応した2つの方向があります。ひとつは経験を生み出す役割、もうひとつは、過去の経験を意識的に手もとに残しておく役割です。

方向その1:やり遂げた経験を積み重ねる

ときに人は「もう少し自信がついてから、やってみよう」と考えます。けれど自己効力感の研究が明らかにしているのは、その逆です。自信は行動の結果であって、行動の前提ではありません。行動を始めてはじめて、自信はゆっくりと芽を出す余地を得るのです。

そして、比較的慎重な人にとって大切なのは、無理に勇敢になろうとすることではありません。むしろ、目標を「失敗しようがないほど小さく」切り分けてみることです。たとえば——

  • いきなり100人の前で講演する必要はありません。まずはチームの会議で一度だけ発言してみればいい。
  • すぐに運動の習慣を身につける必要はありません。まずは10分だけ外を散歩してみればいい。
  • 一気に記事を書き上げる必要はありません。まずはノートを開くだけでいい。

小さな行動でも、ちゃんと数に入ります。そのひとつひとつが、脳に新しい証拠を手渡していくのです。

方向その2:やり遂げた経験を、本当に手もとに残す

多くの人は、経験や能力が足りないのではありません。むしろ足りないのは、「自分の能力を見つける」やり方のほうです。新しい経験をあらためて生み出す必要はなく、「すでにあるのに見過ごされてきた」経験を振り返ることで、それらを改めて受け止め直していけます。

  • 外的帰属をゆるめる:成功を、手当たり次第に運のせいにするのではなく、自分の努力や選択へと結び直しましょう。
  • ネガティビティ・バイアスに対処する:小さな成功のひとつひとつに、あえて記録を残しておきましょう。そうすることで、うまくいったところに気づく手がかりを、自分に与えられます。

自信を築くだけでなく、できなかったときに自分をいたわることも忘れずに

経験を積み重ね、経験を整理することのほかに、もうひとつ見過ごされがちなことがあります。もし人の自己価値が、まるごと「うまくやれたかどうか」の上に築かれているなら、たとえ多くの成功経験を積み上げていても、たった一度の失敗で大きく揺らいでしまいかねない、ということです。

心理学者クリスティン・ネフ(Kristin Neff)が提唱した「セルフ・コンパッション(Self-Compassion)」とは、失敗や挫折、思いどおりにいかないときにも、なお理解とやさしさをもって自分自身と向き合うことを指します。ネフの研究は、努力して自己評価を高く積み上げようとするよりも、セルフ・コンパッションのほうが、より安定した自己価値の感覚をもたらすことを見出しました。それは成果によって自分を証明するものではないので、一度の成否によって激しく揺れ動くこともないからです。

セルフ・コンパッションは、基準を下げることでも、自分に言い訳をつくることでもありません。まだやり遂げていないときにも、なお自分の側に立ち続けようとすることです。自己価値がまるごと成果に依存しなくなったとき、自信もまた、より安定して育っていける場所を得るのです。

自信のなさを乗り越える日常の練習:この6つの問いに答えてみる

もしあなたが、すでにやり遂げたことをいつも見過ごしてしまったり、成功を運のせいにする癖があったりするなら、これらの問いは、過去の経験を整理し直し、忘れられていた証拠を本当の意味で見えるようにする手助けになります。

  1. 最後に自分を誇らしく感じたのは、いつですか?
  2. 自分が確かに持っていると思える3つの強みは、何ですか?
  3. これまで、なかなか素直に受け取れなかった褒め言葉には、どんなものがありますか?
  4. この1年で、あなたはどんなところが変わりましたか?
  5. 最後に、自分でも驚いてしまったのは、いつですか?
  6. 自分が思っていたよりもずっと強いと証明できるような、乗り越えてきた大変な出来事はありますか?

自信は、必ずしも驚くような偉業から生まれるわけではありません。ときにそれは、すでに自分の中にある証拠を、ちゃんと自分の人生経験の中へしまい込もうとする——ただそれだけのことから生まれます。

静かな時間を見つけて、ゆっくりと答えを書き出してみてください。こうして振り返り、整理していく過程の中で、自信もまた少しずつ積み重なっていきます。

日記を書くのが苦手なら、moodmons のような、心理学の問いをもとにした記録ツールを使ってみるのもおすすめです。もっと気楽なやり方で日々を書きとめ、感情を整理し、いつもは見過ごしてしまいがちな小さな進歩に気づく手助けをしてくれます。

参考文献

  • Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review.
  • Baumeister, R. F., Bratslavsky, E., Finkenauer, C., & Vohs, K. D. (2001). Bad is stronger than good. Review of General Psychology.
  • Clance, P. R., & Imes, S. A. (1978). The impostor phenomenon in high achieving women: Dynamics and therapeutic intervention. Psychotherapy: Theory, Research and Practice.
  • Neff, K. D. (2003). Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity.
  • Weiner, B. (1985). An attributional theory of achievement motivation and emotion. Psychological Review.

MoodMons をダウンロード →